2 法廷は情報の宝庫である (『法律学楽想』p251〜252)

全身をアンテナにして目も耳も全身の緊張をもって裁判官に注目しよう。
釈明を求められたり、経過のメモをとらなければならないが、ブラインドタッチでキーボードを操作するようにブラインドタッチメモをとっておくことだ。目と耳と神経は常に裁判官へ。
裁判官の態度・物腰から心証を読み取り、どんな片言隻語も聞き落としてはならない。そこから裁判官の関心の事項を読み取り、主張・立証の力点を把握したい。
当然、相手方代理人や検察官の表情からも「この点を指摘して動揺したからには、それに関する証拠をもっていないに違いない」などと読み取ることができる。
法廷は情報の宝庫。一瞬をゆるがせにせず、全神経を緊張して臨むべしである。そのためには充分の予習をしてゆとりをもって法廷に臨むことである。旧海軍には五分前の精神があったそうだが、一〇分前では法廷が開いていないことが多くて困るものの、法廷は一〇分前に入廷して弁論に、証拠調べに備えておこう。多少の見直しもできるし心のゆとりもまわりをみるゆとりも出来る。
剣聖宮本武蔵は佐々木小次郎との巌流島の決闘に、小次郎の心理攪乱のために故意に遅参したというが、我々は剣の天才宮本武蔵でないのだから駆引きでわざと決闘に遅参する芸は無用である。準備第一と心掛けたい。
法廷で感じた、気づいた主張、立証は次回に備えて発想、構想、骨格だけでも即日起案しておくことは勿論、釈明を求められたら即日勉強にかかり、その日のうちに書き上げるよう心がけよ。裁判官が求めていたことが感覚的にも最も生き生きと自覚されていて最も適切な応答ができるからだ。次回期日はまだ先だ、と先延ばしにしていては肝心なことを忘れてしまうこともあるし、何よりも鮮度が落ちる。更に調べることがあるとしてもとりあえずその日のうちに書き上げてからのことだ。この理は相手方書面に対する反論にもあてはまる。とりあえずその日のうちに骨子だけでも反論を書き上げておくことだ。法廷は豊かな反論を思い付くオーラを出しているのだから、これが消えないうちに発想だけでも書き上げておきたい。